「滬港通(上海・香港ストックコネクト)」とは、香港市場を通じて上海A株の売買が可能となる「滬股通(上海コネクト・ノースバウンド:北向き取引)」と、上海市場を通じて香港株の売買が可能となる「港股通(香港コネクト・サウスバウンド:南向き取引)」を合わせた言葉で、上海・香港間で互いの上場株式に対する直接投資を認める制度です。2014年11月に制度がスタートし、投資対象や投資金額などに制限が設けられていますが、「滬港通」の導入で上海・香港間の双方向の直接投資が実現しました。日本を含む海外投資家はこの制度を通じて上海A株の銘柄に投資することが可能になり、逆に中国人投資家はこの制度を通じて香港株に投資することが可能になりました。
また、深セン・香港間の「深港通(深セン・香港ストックコネクト)」も16年8月に導入が発表され、同年12月にスタートしました。こちらも同じように、香港市場を通じて深センA株の売買が可能となる「深股通(深センコネクト・ノースバウンド:北向き取引)」と、深セン市場を通じて香港株の売買が可能となる「港股通(香港コネクト・サウスバウンド:南向き取引)」を合わせたものです。「滬港通」の制度と同じように投資対象や投資金額に制限はありますが、この制度の導入により日本を含む投資家も深センA株の銘柄に投資することが可能になりました。
指数構成銘柄の入れ替えに合わせ、 毎年6月と12月、対象銘柄の入れ替えが行われます。対象銘柄から外れると、新規買い付けをすることができず、売り付けしかできなくなるため注意が必要です。また、対象のA株銘柄が特別処理銘柄(STもしくは*ST銘柄)に転落した場合にも投資対象銘柄から外れ、新規の買い付けができなくなります。
このほか、A株企業が海外の投資家に支配されないよう外資保有比率の制限も存在します。海外投資家によるA株銘柄の保有比率の上限は合計で発行済み株式の30%と決められており、保有比率が発行済み株式の28%に達すると新規買い付けができなくなり、一時的に30%を超えて約定してしまった場合には、取引所により5営業日以内に強制売却措置がとられます。なお、外資保有比率が26%以下に戻れば、再び新規買い付けができるようになります。
取引時間や取引制度は、基本的にそれぞれの証券取引所のルールに準じて決められていますが、どちらかの市場が休場の日は取引できないため注意が必要です。
なお、23年3月の制度変更に伴い、香港から上海への北向き取引の対象銘柄は「上海180指数」「上海380指数」から「上海A株指数」の構成銘柄に変更。香港から深センへの北向き取引の対象銘柄は、「深セン成分指数」「深セン中小創新指数」から「深セン総合指数」の構成銘柄に変更されました。これにより、日本人が投資できるA株の範囲が大幅に拡大しています。また、上海や深センから香港への南向き取引の対象銘柄には、香港にプライマリー上場する外国企業も選ばれるようになりました(一部例外を除く)。
滬港通と深港通の比較(24年6月時点)
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滬港通 (Shanghai-Hong Kong Stock Connect) |
深港通 (Shenzhen-Hong Kong Stock Connect) |
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滬股通=北向き取引 (香港→上海) |
港股通=南向き取引 (上海・深セン→香港) |
深股通=北向き取引 (香港→深セン) |
投資限度額 |
520億元/日 |
420億元/日 |
420億元/日 |
520億元/日 |
投資対象銘柄 |
・上海A株指数銘柄 ※1 ※2
・AH重複上場の上海A株銘柄 ※2
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・ハンセン総合大型株指数銘柄
・ハンセン総合中型株指数銘柄
・ハンセン総合小型株指数銘柄 ※3
・AH重複上場のH株銘柄
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・深セン総合指数銘柄 ※1 ※2
・AH重複上場の深センA株銘柄 ※2
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銘柄数 |
1454銘柄 |
559銘柄 |
559銘柄 |
1568銘柄 |
銘柄入れ替え |
毎年6月と12月 |
毎年3月と9月 |
毎年6月と12月 |
投資家制限 |
科創板上場銘柄は機関投資家のみ |
本土の機関投資家・証券口座残高50万元以上の個人投資家 |
創業板上場銘柄は機関投資家のみ |
資料:上海証券取引所、深セン証券取引所、香港証券取引所
※1 | 平均時価総額50億元以上、平均売買代金3000万元以上、取引停止日が全体の5割以下の場合のみ採用 |
※2 | 特別処理銘柄(STまたは*ST)を除く |
※3 | 時価総額50億HKドル以上 |
● | 滬港通とは上海・香港間で互いの上場株式に対する直接投資を認める制度 |
● | 深港通とは深セン・香港間で互いの上場株式に対する直接投資を認める制度 |